病気と社会との相互関係、その歴史を追った本。
まず戦争が病気を広めたと、ギリシャの昔から話は始まる。トゥキディデスの『戦史』を主な材料として、いかに戦争が病気を広めたかを述べている。
次に中世での癩病を語る。癩は元々、熱帯地方の病気であったが、中世初期になって西欧に侵入した。癩の恐ろしさはこの病気に対する社会の目であろう。
黒死病として西洋史で有名なペスト、特に1348年の大流行は有名である。人口の三分の一は死んだのではないかとある。
次に梅毒の話である。イタリヤではフランス病と呼ばれ、フランスではナポリ病と言われたとか。実は西欧ではスペインから来たらしい。
結核は産業革命による工業化によって広まった。
20世紀になってインフルエンザ、特にスペイン風邪は全世界的に大量の死者を出した。また癌は職業病としての側面を持っていた。かつての煙突掃除人は劣悪な環境の中で長時間を過ごし、癌にかかる者が多かった。その後現在に至るまで発癌物質による被害は続いている。
コレラの流行については、明治開化当時の日本にも及んだとある。この他にも明治以降の我国近代でどのような病気が流行ってきたか、を述べる。性病や「女工哀史」の結核、更に公害の発生、社会変革による精神病とその対応が語られる。
現在では医学の進歩、健康の改善で克服された病気も多い。読後感は、いわゆるグローバル化によって広まった疫病が多い、という認識である。この本が書かれた当時はグローバル化などという言葉がなかったから使っていないが。
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