2018年2月15日木曜日

「叛軍」シリーズ


岩佐寿弥監督によるシリーズ。

反戦自衛官小西誠の支援映画として「叛軍」を幾つか撮った。そのうち長尺の劇映画「叛軍4」はフィルムセンターでも過去に上映されていた。今回13が発掘され「発掘された映画たち」シリーズで、4と併せ上映された。
このうち12は昭和45年、3は昭和46年、4は昭和47年の製作である。

13は記録映画である。
反戦自衛官の小西の演説や、昔よく見た学生集団の行進。ヘルメットをかぶり、棒を持って行進するもの。

裁判所の周りで不思議な面をかぶった数人の者が歩き、ちょっと不思議な台詞をいう。これは後からセンターの解説員の説明によると、ブレヒトの戯曲『例外と原則』の台詞らしい。
小西自衛官の裁判が行われたのは新潟で、新潟地裁に入ろうとする支援者たちと、それを拒む裁判所職員のやり取りを結構長く映していく。最初は建物前で、更に建物内の控室で、裁判所の対応を非難し質問する。それに答える、というかなんとかなだめようとする職員たち。反戦自衛官問題というより、一般的に役所の対応を責めている映像を観ている感じ。

後、東大駒場の会場にやってきた反戦自衛官(小西でなく)の演説(あまり長くない)のフィルムがある。

さて元から知られていた「叛軍4」は、13が記録映画であるのに対し、基本的に劇映画である。しかし何も知らずに観ると全く記録映画と思わせる。

第二次世界大戦中、厭戦で刑務所に入っていた元兵士が演壇に立ち、26年ぶり(昭和20年以来)にその体験を公衆の前で語る、というつくりである。

カメラは固定位置で、その話す姿を映す。1時間以上(?)と映像は変わらない。黒眼鏡をかけた背広服の四十代の男が喋っている姿を、延々と映し出す。目をつぶっていて時間が経ってから明けても同じ場面である。これだけ同じ場面が続く映画は観たことない。

内容は、南方に出されたくない、そのため病院に入りたい。それには気違いの振りをするといい。ただしすぐ見破られるであろう。そこで当時最大の禁忌であった天皇非難やアカの言辞を書く。それで気違いのふりをする。軍隊にとって不名誉になる兵を出すより気違いにしてしまった方がいい、と判断され入院できるだろうという目論見であった。
これは失敗するが別の要因で刑務所入りになり、終戦後出所した。戦後26年間、考えてきた。しかしこれは反戦というのだろうか、まだ自分でもよくわからない。

演説が終わり男は演壇から降り、ようやく場面が変わる。その後主催者が質問する場面が出る。
実は以上は劇映画なのであった。

その後、飲み屋の一室と思われる部屋で講演の主催者と、演じた役者の対話になる。反戦とは何か、を役者に訊く。納得できる返答が得られず、これまた二人の会話(よく理解できない)が長々と続く。
映画の最後も変わっている。男の顔が出て、影の声が聞こえる。扮することを止めても自分自身になるわけではない、とかなんとか何回も出る。

監督は社会批判映画に対して独自の考えを持っており、このような作品になったとか。ともかく観たことない映画ではある。

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