かなりユニークな政治思想史である。通常の政治思想史とは一線を画する。
精神史とは、通常の思想史で扱うような大家の思想内容の説明に留まらず、哲学はもちろん芸術や文学等を含めて、その時代の思想の全体な状況を把握していく方法を言うらしい。そのため内容構成はかなり通常の思想史と異なっている。
プラトン、マキャベリ、ホッブズなど大家の思想の説明で構成されているような思想史は珍しくないが、これは全く異なる。あまり政治思想史では扱われない項目の説明が続くとか、政治思想の大家も標準的な内容が省略されたりしている。
例えばギリシャ悲劇の解説に結構ページを割くとか、まえがきで著者も断っているが、なぜ法学部の政治思想史で扱うのか読者が不思議に思うようなところが多い。ともかく通常の思想史と競合するような著書でなく補完的な著書と言わざるを得ない。
もう一つの特色は、内容が高度で難易度が高い。例えば本著で扱われている思想家の概略を知ろうと思って読む本ではない。特に近現代の思想家について感じた。それらの思想家の概略的一般的知識を前提のうえ、著者の関心事項が述べられているので、あまり基礎的な知識のない読者は難しく感じるであろう。入門的な説明でなく、著者の研究論文と言った体裁である。
正直、一応読了したものの、理解できていないところが多かった。そういう意味では批評のようなものを書く資格はないのだろうが、このような感想を持ったところを述べた次第である。
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