2025年7月30日水曜日

鴻上尚史『人間ってなんだ』講談社+α文庫 2022

演出家の鴻上が雑誌に連載したエッセイの中から「人間ってなんだ」という観点の文を集めたもの。著者は演出家だから人と付き合わざるを得ない。それでいつも相手の立場になって考える練習をしてきたそうだ。またシンパシーの他にエンパシーという言葉が出てくる。相手の立場になってその考えを推察するというか。相手に感情移入する必要はない。

エッセイの部ではイギリスの演劇学校に行った。そこでの体験がある。また無意識の差別感情を指摘する文もある。更に著者が学生時に黒澤明の『影武者』のオーディションを受けた経験。演出家蜷川幸雄の思い出もある。

2025年7月29日火曜日

金星怪獣の襲撃 新・原始惑星への旅 Voyage to the planet of the prehistoric women 1968

デレク・トーマス監督、米、79分。金星に向けて飛び立ったロケットから通信が途絶える。新しいロケットを飛ばし救出とできれば探検。

金星には白人の若い女たちが何人かいてそれらが金星人である。救出隊は行方不明になっていた先人たちを助ける。金星には守り神テラという怪獣がいて、翼竜である。海に浮かんだ探検艇を襲うが、銃で退治する。死んだテラを見て金星人らは復讐を神に祈る。火山が噴火し溶岩が流れる。大雨が降る。探検隊のロボットが何とか隊員たちを溶岩から救うがロボットは倒れ、溶岩流に流される。助かった隊員たちはロケットで金星を脱出する。

金星人は自分たちの神テラは復讐も出来なかった、だめな神だと言って破壊する。代わりに溶岩で溶けた地球人らがおいていったロボットの残骸を新しい神として崇める。

2025年7月27日日曜日

勢古浩爾『定年後に見たい映画130本』平凡社新書 2022

市井人なのだが、なぜか多くの本を出している人。映画好きには古典映画が好きな人と、新しい映画を主に鑑賞の対象とする人がいる。著者は後者である。

最後の章に著者のベスト15がある。その前に北野武のベスト10が書いてあるのだが、北野の選択した映画をコケにしているのは納得できない。北野は古典的定番映画を多く挙げており、「天井桟敷の人々」「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」 「七人の侍」などがある。この著者は北野のベスト映画の多くを見ていないと言い、「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」を愚作ではないかと断じる。愚作と感じるのは個人の勝手だが、理由を書いていない。嫌いな物を好きになる必要はないが、愚作と書くならその理由を書くべきではないか。本にして出版しているのだから。北野のベスト10の最後に「鉄道員」とあるが、ピエトロ・ジェルミか高倉健の出ている映画か明記してないのも不親切ではないか。

著者のベスト15は次のようである。「七人の侍」「切腹」「逃亡地帯」「夜の大捜査線」「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」「カリートの道」「アポロ13」「ブラス!」「グリーンマイル」「リトル・ダンサー」「アトランティスのこころ」「冒険者たち」「ワールド・オブ・ライズ」「ジャンゴ 繋がれざる者」「ラ・ラ・ランド」。「カリートの道」の階段場面で「アンタッチャブル」もその基の「戦艦ポチョムキン」についても言及がない。「冒険者たち」ではジョアンナ・シムカスが好きだと言っているのに、「若草のもえる頃」について何も述べていないのはなぜか。もし見ていないのなら、こんな本を出すべきではない。

2025年7月26日土曜日

安部公房、三島由紀夫、大江健三郎『文学者とは何か』中央公論 2024

標記三人の作家による、鼎談及びそのうち二人に対談を集める。

内容は「文学者とは」三人、1958、「現代作家はかく考える」三島、大江、1964、「短編小説の可能性」安部、大江、1965、「二十世紀の文学」安部、三島、1966、「対談」安部、大江、1990、である。

ともかく三島の頭の切れるのには感心する。最初の鼎談は本当に面白い。他の対談は理解できていないところがある。一番長いのは安部、三島による「二十世紀の文学」であるが、これなど特に難しく感じた。最後1990年の安部、大江の対談で安部が三島の思想は嫌いだが人格は好きだと言っているのが心に残る。

2025年7月25日金曜日

勢古浩爾『それでも読書はやめられない』NHK出版新書 2020

市井の読書人、勢古浩爾、なぜかやたらに本を出している(出せる)人。読書に関する本を沢山出している。本書は前半が著者の読書遍歴でそれが特徴。自伝は好きなのでこれも一種の自伝だからその点面白く読めた。今は読書人であるが、子供の時から本の虫だったわけではない。

子供時代は漫画を読んでいた、スポーツをやっていたとある。20歳を過ぎてからある日突然『チボー家の人々』を読み始めたという。その後、文芸評論、日本や世界の名作文学を読み、哲学にはまった。しかしながらほとんど全く哲学書は理解できなかった、読んでも分からかった、と書いてある。このあたり、多くの読書家も同じような経験があるのではないか。ともかく数千冊これまで読んだと書いてあるが、ある時期までは大した読書家ではない。読書歴だけでなく主張を書いている。

その後は有名な「読書人」を論じている。立花隆、丹羽宇一郎、出口治朗、齋藤孝、佐藤優、成毛眞、森博嗣、又吉直樹らである。あとは著者が勧める本の紹介である。

2025年7月23日水曜日

金星ロケット発進す First spaceship on Venus 1959

クルト・メーツィッヒ監督、東独、波蘭、78分、総天然色。制作当時より20年以上未来の時代。砂漠で発見された残骸。調べて金星から来た物らしい。中に録音機があったが何を言っているか専門家も不明。ロケットで金星まで行く。

乗組員は国際色豊か。紅一点の医者は谷洋子演じる日本人。途中で月基地からの連絡あり。流星群にぶつかり、これが途中の事故。金星に着く。探検車で探索。またオメガという戦車型の小型ロボットが電子頭脳で先導する。穴に落ちたり、小型の虫のような生物か、あるいはロボットか不明の物を発見。泥状の流体が乗組員を襲おうとする。電子銃で撃退。後にロケットに帰ってからこれはまずかったと言われる。

言語も解読できた。金星人は地球を襲うつもりだった。しかし事故が起きて自滅した。電子銃を撃ったため、爆破を引き起こすらしい。これを止めに行くが、その間、ロケットは制御がきかなくなり、発射してしまう。止めに行った3人は犠牲になる。地球に帰還して記者会見をする。

2025年7月20日日曜日

大岡昇平『無罪』小学館文庫 2016

大岡昇平が主にイギリスの、無罪となった裁判物語を13編書いている。当初の発表は1956年から1962年にかけての雑誌上である。原典は E. Villiers, Riddle of crime, 1928という、判決が無罪となった裁判読物だそうだ。原典の発表時期を見ても分かるように、かなり古い時代の事件が集められている。

知っていたのはここでは「黒い服の男」という題で収められている、マドレイン・スミスの事件と「サッコとヴァンゼッティ」事件だけである。古い時代の犯罪なので、事件そのものだけでなく、その当時の現在とは全く異なる時代状況が伺われ、それに興味を持つ。