本書には14編の短篇小説が含まれている。ドイルの多くの作品のうち、これまで日本で未紹介だった作品から選んで集めた短篇集。これまで未紹介だったとは、それほど傑作とは思われていなかったからであろう。実際に読み出しても、あまり面白くない。それでAmazonの読者評に従い、この中で面白いと指摘のあった短篇のみ読んだ。
『エヴァンジェリン号の運命』は海洋冒険譚と恋愛物の組み合わせ。語り手は好きだった女が別の男と婚約することになり、怒る。その女が親族、婚約者とある島に行き、一人だけヨットに乗っていると流されてしまう。行方不明になり死んだものと思われたが、実は語り手がその女を匿って、相手も自分を好きなので一緒になるという話。『やりきれない話』はぐうたらで自分勝手な亭主を持っているので、苦労して仕事を見つけてきたのに、亭主にお金を盗まれ、仕事の約束を果たすため出費を強いられた妻の話。『業師ウィルキーの思い出話』詐欺師のウィルキーが、これまでどのような詐欺をどうしてやってきたかの回顧談。
『死の航海』は歴史SFものという特殊な話。第一次世界大戦でドイツ帝国は敗れ帝政は終わったが、その終わり方に関して、ドイルは別の話にしている。まず大戦末期の皇帝と政府高官のやりとりがある。ここを読むと第二次世界大戦末の御前会議を思い出してしまう。皇帝は歴史の実際と違って、名誉の戦死を遂げるため艦隊を繰り出し、英海軍の艦隊と戦うのである。つまりドイツは負けたが、その負け方を史実でない創作によって語っているのである。(小池滋監訳、北原尚彦編)
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