島津昇一監督、東映、66分、白黒映画。
東京湾の埋立地。ショベルカーが土をすくい上げていると人間の手が見えた。早速警察がやってきて現場検証が始まる。被害者は男、体格はいい、歯並びが悪い。特に手に数珠を持っていた。警察で被害者の身長を、1m・・・70cm、と言う。メートル法になっている。このシリーズ初期の頃は5尺何寸と言っていた。高度成長期で急速に「近代化(=西洋化)」が進んでいたとの証左である。当時、170cmは男でも大きい方。今なら175cm以上の感覚。
明くる日から近所の聞き込み、また数珠の種類を調べる。仏具屋で数珠はある新興宗教のものと分かる。高度成長期は新興宗教がその信者を伸ばした時期でもある。田舎から都会にやって来た人々は、田舎の封建的呪縛は逃れたが、人との繋がりの希薄さに不安になり、新興宗教に入った者は多い。その新興宗教を調べたが分からない。聞き込みでも事情はあまり判明しない。そのうち被害者と思われる前科者が浮かび上がる。その前科者には以前妻がいて別れた。その妻の行方を追う。その元妻は再婚していたと分かった。この被害者の元妻と今の夫を警察に連れてくる。同じ時に警察の別々の部屋で訊問する。被害者によって人生を今までも、更にこれからも滅茶苦茶にされた(される)弱者の悲劇が明らかにされる。
高度成長期のシリーズの一作である本映画も昭和30年代後半に入っているが、下町は今の感覚でいうと貧民窟のように見える。一斉に豊かになったわけではないし、貧しい地域が舞台なのでその当時の風景なのである。
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