2025年9月30日火曜日

志村五郎『記憶の切絵図』ちくま学芸文庫 2021

数学者の志村五郎(1930~2019)の自叙伝。書名の切絵図とは志村の家が、江戸時代に切絵図を作っていて、自分の生まれ育った場所もその切絵図内にあるところから来ているようだ。

後にアメリカに渡り、有名な数学者になった。これを読むと志村は非常に自信家で自ら思ったことをはっきり言う。それがこの著書全体にも良く表れている。学者だから当然そうで、そうでなければ学者になれないだろうと思われる。それが学問の世界以外にも志村の生き方に現れている。最初の百頁くらいは戦前の東京がどんな感じであったかの一例として面白い。そこにも書いてあるように当たり前のことは誰も書かないから、時代が変わると後代の者は全く知らない、思いもよらない事柄が多くあると思う。(2008年、筑摩書房刊が初出)

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