百歳生きているかと思わせる高齢の巨人は長生きだけでなく、超常的な能力を持つ。人間でない。小説の初めの方、テュリエス・ベランゲルト将軍はスペインへの出征の際、巨人で同名のベランゲルトに会う。超高齢に見える風貌で、ベランゲルト将軍に似ている。老人は将軍の祖先にあたるらしい。この老人は将軍を守る。エジプト遠征の時も老人がどこともなく現れ、将軍を窮地から救う。将軍の回想録が長く続く。テュリエスは山地の城で生まれた。その出産にもあの老人が関わった。幼馴染の少女マリアニーヌと仲が良い。ラヴァンジ侯爵夫人が革命を逃れてやってきて、すっかりテュリエスは夫人に惚れ込む。パリの上流階級の夫人に主人公が恋し、その一方、少女が主人公を誠実に愛し続けるという、バルザックおなじみの構図が本小説にもある。テュリエスはナポレオンの配下で目覚ましい活躍をし出世する。革命後の政局の変転で、マリアニーヌの家は窮乏していく。長い間、テュリエスがロシヤ遠征に至るまで待ち続けるマリアニーヌは、もうテュリエスは生きていないのではと心配する。
テュリエスは実はパリに戻っていたがマリアニーヌは知らない。あの百歳の老人がマリアニーヌを地下墓所に連れて行く。そこで生きる望みを失ったマリアニーヌから命をもらい自分が永らえようとしていた。しかしマリアニーヌはテュリエスが生きていて、自分を助けにやってくると知り、会いたい気になる。テュリエスは部下を叱咤し地下墓所に行く場所を掘っている、というところで小説は終わる。資料がここで終わっているからと説明がある。
このさまよえる超人伝説というべきものが当時あり、バルザックは先人らの創作をも参考にしつつ書いたようだ。
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