2021年2月27日土曜日

トルストイ『神父セルゲイ』 Отец Сергий 1890

 中編小説、将来を嘱望されていた貴族の若い将官がその地位を捨て、神父になりその後を描く。貴族のステパンは見栄えが良く、何事にも優れ努力し、将来は約束されていた。多くの若者の憧れであった令嬢と婚約する。ところがその相手が当時のニコライ1世と関係があったと分かり、ステパンは衝撃を受ける。ステパンにとっても皇帝は最高の忠誠を捧げていた人物だから。婚約を解消し、職を凡て辞任し修道院に入る。そこでの修業を経、後に神父セルゲイと言われるようになる。厳しい自己修練をする。敬意を多くの者から受けるようになる。特に不治の娘を治療してから、より一層の尊敬を受ける。

かつて知り合いだった女の行方を捜す。会った女は今では一家を支えるために苦労していた。セルゲイは自分は神のために生きていると称しているが、実際は人のために生きていると悟る。このような女こそが神のために生きている者だと。その後は巡礼の一行に加わり、現在ではシベリヤに住んでいるという。

中村白葉訳、河出書房トルストイ全集第9巻、昭和48

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