ドストエフスキーの『白痴』の映画化である。黒澤明監督の映画が最も有名だろうが、これはジェラール・フィリップ主演の仏映画である。
映画はジェラール・フィリップ扮するムイシュキン公爵がエパンチン家を訪ねる場面から始まる。同家のやり取りは簡単に描かれ、ガーニャ宅でナスターシャが訪問、更にナスターシャ家での十万ルーブリの火中投げ込みも映画になっている。ここで初めてロゴージンが登場、小説のように最初で、ムイシュキンとロゴージンが友人同士になるというわけでない。
ロゴージンと去ったナスターシャは歓楽の日々を送る。内心ナスターシャはムイシュキンを慕っている。嫉妬したロゴージンはムイシュキンに殺したいと言うが、ムイシュキンの善良さに打たれ、十字架を交換する場面はある。嫉妬に狂ったロゴージンはナスターシャを殺害する。小説を読んでいると複雑でナスターシャ殺害がやや唐突に見えるくらいだが、本映画では簡略化してある分、わかりやすい。
イッポリートの告白などがある第2部は省略だし、小説でそれなりの役があるレーベジェフなど一瞬の登場、またムイシュキンを巡るナスターシャとアグラーヤの対決もあっさりしているが、映画であるからしょうがない。
本作はジェラール・フィリップを観る映画であり、また全体として抒情的な仕上がりになっており、これは小説『白痴』の重要な性質なので成功した映画化と言えるだろう。
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