語り手は東京の、日本史を専門とする私立大学講師で、九州に調査に来ている。そこである男に会う。愛媛の役場の吏員と言う。郷土史家で、彼から魏志倭人伝にある、邪馬台国への道筋の説を聞く。その見解は面白く、語り手は感心する。一緒の宿に泊まったが、明くる日、郷土史家は先に宿を立ち、それ以来会っていない。東京に戻り、先輩に郷土史家の説を話すと面白いと言った。
ところがその後、あちこちから講師に問い合わせが来た。いずれも古代史に興味を持って勉強している素人である。あの愛媛の郷土史家が来て講師の名刺を出し、東京の学者と面識があると言って、興味を持っている相手に魏志倭人伝の話をし、相手から宿泊や金をもらっているとある。語り手は驚く。更にある婦人から夫が郷土史家と会って大金を持って出かけ、いつまで経っても連絡もなく、帰ってこないと、知らせが来る。警察に届を出した。ついに九州の国東半島の半島の海岸で、失踪していた二人の死体が見つかったと連絡が来た。魏志倭人伝に従って、川を舟で下っているうちに遭難したものであろう。