2015年2月28日土曜日

フロベール『三つの物語』Trois Contes 1877

題名のように3つの短編からなる。『素朴な女』『聖ジュリヤン伝』『ヘロデヤ』の三つ。

このうち最初の『純朴な女』は他にも訳名があり、『純な心』とか『まごころ』とかの題もある。上に挙げた訳名は中央公論社世界の文学、山田稔訳による。
『素朴な女』を最初に読んだのは、子供の時、児童向けの文学全集で『まごころ』と題されていた。この訳名が自分には懐かしい。原題はUn cœur simple

『まごころ』はフェリシテという女中の一生を描いたもの。若くして恋に破れ、女中になってからはひたすら女主人に忠実に使え、その子供たち、特に女の子の成長を楽しみに生きる。子供たちが家から離れてからは女主人と友達のようになる。また鸚鵡をもらってからはその鸚鵡が彼女の生きがいとなる。その鸚鵡の死後は剥製にして傍から離さない。

『聖ジュリヤン伝』は中世が舞台。狩りに明け暮れていた貴公子ジュリヤンが後半生は聖人になるという西洋によくある話。そのきっかけには自らの親を殺めるという悲劇があった。

『ヘロデヤ』は、聖書外伝を元にしたワイルドの『サロメ』の話を、フロベールが書いたもの。

『まごころ』の女主人公フェリシテの若い日の挿話として恋人ができ、ふたりで逢引きをする場面がある。二人で道を歩いている。いつまでもこの道を歩いていきたいとフェリシテは思った、という説明が子供の時の読書の記憶として残っていた。完訳版で読み直すとこの言葉とおりの文は見当たらなかった。記憶間違いか、子供向きの訳なので訳者が自分の文を書いたのか。見つからないのはやや残念であった。

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