あらくれ 昭和32年

 

徳田秋声原作による成瀬己喜男監督の東宝白黒映画。

気の強い主人公、高峰秀子は商店の女主人である。前の結婚は嫌で初夜から逃げ出してきた。夫の上原謙は浮気がひどく身分の低い高峰を馬鹿にしている。妊娠するものの、夫婦喧嘩で流産してしまい、家に戻る。兄は彼女を連れて山中の田舎の店へ女中に出す。そこの主人は森雅之で、病身の妻は離れていて、高峰に手を出す。妻が戻って来るので、森はさらに田舎に高峰を移す。高峰の父親が彼女を連れ戻しにくる。気の弱い森は親に従うよう彼女に言う。

東京に戻ってから誘われた洋装店で働く。そこで加東大介と共に店を持つ。彼女の働きで店は軌道に乗る。しかし加東は怠けて怒った高峰は夫婦喧嘩をやらかし、店員は持ち逃げする。もう一度二人はやり直し、店は繁盛するようになる。

田舎の主人の森はたまに東京に来て、高峰を誘う。そのうち森の調子が悪いとの噂を耳にし、彼女は田舎まで見舞いに行く。森は既に亡くなっていた。

加東は別宅に二号を囲っていた。それは高峰の知り合いである。東京へ戻った彼女は加東の後をつけ妾宅に乗り込み、二号と掴み合いの喧嘩となる。加東はその間に逃げ出していた。雨の降る中、妾宅を出た高峰は加東に愛想をつかし、店に電話し信頼する店員に鞄を持って出てこいと言う。また新規にやり直すつもりである。

高峰の相手の男は揃いもそろってダメ男ばかりであり、森は善人なのだが弱くて頼りにならない。バイタリティのある彼女は苦難にめげず前向きに生きていく。

大正時代の設定でその頃の女のイメージとはかなり異なる、気が強くて積極的な性格である。このような女性も典型的な日本女性の一つの型と思えてくる。