数年後、牛追村は東京に併合され都市化が進んでいる。ここに新しくできたホテルへやってきたのは千田である。たまたまそこでかつての仲間の一人と会い、今までの冒険譚を披露する。相手の仲間も作家であり自分の原稿を取りに来た出版社の担当に千田の話をする。編集者はすっかり乗り気になり専門家を集め座談会を開こうと言う。開かれると千田の話は内容は何もなくごまかしのみで、同席者たちは呆れ次々と退席してしまう。
また千田は自分が安南独立運動に関わっているため刺客に狙われているという。実はこの「刺客」は彼にだまされた借金の取り立てであった。再び千田は外国航路の船上の人となり、自分と同じ山師に会い交歓する。
さらに数年後。かつての仲間たちに帰朝し家を新築した千田から招待の手紙がくる。みんなで行くと豪邸である。彼にもてなされ、大いに楽しみ一同引き揚げる。仲間が戻ったのち千田は成功した旧友の山師に礼を言い、家に掲げてあった自分の名の表札をはずしてドブへ捨てる。
登場する俳優は戦後も活躍した人が多く、若い日の姿を見られる。主人公の法螺吹きを演じる千田是也は髪も黒く非常にスマートな体つきである。村長兼作家の三島雅夫は後年と大差ない。作家の殿山泰司はまだ髪の毛がある。その妻役の沢村貞子は変わらない。その他小澤栄や信欣三も若い。夫々役にはモデルがいるらしく、千田の主人公にはジャーナリストでそういう人がいたらしい。
文士だから普通の人とは違い、だらしなくても不思議でない。ただここに描かれたおおらかというかいい加減な暮らしぶりはいかにも古き良き時代という感じがする。
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