原作の人物を借りているものの、脚色によってかなり自由に制作している。
貧民向けの宿屋を舞台にした群像劇。原作では誰が主人公と呼ぶべきか不明だが、映画ではジャン・ギャバンとルイ・ジューヴェがはっきりとした中心人物である。ジャン・ギャバン扮する泥棒とジューヴェの男爵の交流が結構な割合を占める。原作では回想として語られる男爵の落ちぶれが映画ではまず描かれる。更にその男爵の家へ泥棒として入ったジャン・ギャバンがすっかり男爵と意気投合してしまい、男爵は差し押さえをくらった後、貧宿屋へ移る。
原作で大きな役を演じる巡礼ルカはその他大勢の一人の扱いである。ある意味、この劇のクライマックスとなる宿の主人が殺される場面は、原作と同様に映画でも大きい山場となっている。
なんといっても、この映画が原作の『どん底』と一番違うのは明るい。前向きに生きていこうとする姿が描かれていることである。最終場面などはチャップリンを真似たのかと思わせる。
フランスの名優ジャン・ギャバンとルイ・ジューヴェの共演が一番の売りかもしれない。
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