この著書の面白さは経済学の常識に真っ向から挑戦し、著者としてその考えを示していることである。すなわち現代の経済学の標準的な考え方からすれば経済が正常に機能しているのは価格調整が行われ、経済が均衡に向かう力が働くためとされる。ところが岩井からすればもし調整が速やかに進めば、均衡に向かうどころかハイパーインフレーションや恐慌に陥る。それを防いでいるのはむしろ調整をさせない不均衡な要因のせいであるという。
見えざる手によって市場均衡が得られるというが、その見えざる手のメカニズムとはどうなっているのか、実際にどのように動いているはずか著者はモデルを示している。
いずれにせよ経済学の標準理論が当然視している前提から検討し、通常の理解と全く異なる見方を整然と説明しており、感心させられる。
内容は高度であり咀嚼が十分でないにも関わらず刺激的な著書である。
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