2025年4月1日火曜日

町山智浩『ブレの未来世紀』新潮文庫 平成29年

前著『〈映画の見方がわかる本〉ー2001年宇宙の旅から未知との遭遇まで』に続く、80年代の映画の見方を解説した本である。本書で取り上げられた映画は「ビデオドーム」「グレムリン」「ターミネーター」「未来世紀ブラジル」「プラトーン」「ブルーベルベット」「ロボコップ」「ブレードランナー」の諸作である。

いずれも以前より親しんできた映画であり、2回以上見ている作品が多い。これらが優れている映画、見るに値する映画とは思っていたが、本書でその意図するところを深く理解することができた。映画について書いてある本の中には著者は分かっているつもりでも、あるいは読者を煙に巻こうとしているのか、よく分からない本がある。本書はそれらと違って、いかにもよく分かったと思わせる本である。

2025年3月31日月曜日

冷たい水 L’eau froide 1994

オリヴィエ・アサイヤス監督、仏、92分。高校生の男女、好き合っている。レコード屋で男が万引きし、男は逃げるが女は捕まってしまう。

女は両親とも嫌っており、母親はアラブ人の男と一緒になり、父親の方ともうまくいっていない。女は父親に引き取られ、施設に入れられる。男は学校の教師からがみがみ言われる。後にダイナマイトを手に入れ知人に渡す。女は施設から逃げ出す。男ら学友が騒いでいるところに来て、男に一緒に逃げてくれと頼む。遠い地方に知り合いがいて芸術家の楽園がある、そこに行ってくれるか。男は承知する。後で女友達に、芸術家の楽園とかそこに知り合いがいるとかは嘘だと言う。男に一緒にいてもらいたいからだと。母親とその恋人が逃げた女を捜しに来るが見つからない。

女は男と逃避行の旅に出る。ヒッチハイクで遠くまで行く。その後歩きになる。川のそばの野宿で、女は裸になり男のそばで寝る。男が起きると女はいない。川の傍に女の書置きが残っていて男はそれを読む。そこで終わり。

2025年3月30日日曜日

エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの国際事件簿』 1964

クイーンが書いた三つの犯罪実話集を収録。『私の好きな犯罪実話』(1956)、『エラリー・クイーンの国際事件簿』(1964)、『事件の中の女』(1966)であり、以上の訳が本書である。

犯罪実話と言っても、事件の記録そのままというより、事件を元に脚色し小説化しているようである。例えば初めに『エラリー・クイーンの国際事件簿』があり、これは20話あって名の通り、世界各国の事件を扱っている。第2話に「東京の大銀行強盗」とあって、これは題からすぐに想像できないかもしれないが帝銀事件を元に書いている。自分が名をつけるなら「東京の大量殺人事件」とか「東京の毒殺大事件」とかにする。

犯人は平沢でなくキヨシ・シムラと変えてあるが、帝国銀行椎名町支店とか安田銀行品川支店などはそのまま使っている。事件の内容はかなり自由に、というかデフォルメ、茶化して書いている。帝銀事件は日本の犯罪史上の重要事件であり、これまで多くの本や映画、ドラマがある。インターネットでも情報は多くある。それをここの記述は、まるである事ない事を、読者が面白ろおかしく読めるように脚色した、風俗雑誌を読んでいるようである。

実際の犯罪は事実ということで、こさえ物の推理小説より面白く読める場合が少なくない。しかしここの立場は手を入れなくてはならない、あるいは入れたい、という考えのようだ。第5話「アダモリスの詐欺師」はルーマニアが舞台で、寒気のするほど陳腐な犯罪が書いてある。今までドラマなどで何百回使われたか分からない手口である。これで読む気が失せた。(飯塚勇三訳、創元推理文庫、2005)

海獣の霊を呼ぶ女 The she-creature 1956

エドワード・L・カーン監督、米、77分、白黒映画。小屋で見世物にしている催眠術師には女の助手がいた。海岸近くの家で夫婦の死体を、心霊学の博士が見つける。警察が調べるとおかしな足跡がある。心霊学博士は顔見知りの催眠術師が、その家から出ていくところを見ていた。催眠術師は警察から尋問されるが、人間のしたことでないと意味不明の事しか言わない。

この催眠術を見世物にして儲けようと、心霊学博士が下宿している実業家は思い立つ。催眠術師の助手である女が海獣を呼び起こす女で、術をかけられ眠ると海から海獣が出てくる。殺人をしていたのは海獣で、女の祖先であるから雌である。助手は心霊学博士と相思の仲になり、催眠術師から逃げたがっている。

公開で行われた催眠術では、女はなかなか術にかからないが、海獣は海から出てきて刑事を殺し、更に実業家、また催眠術師まで殺す。海獣が海に帰ろうとするところを警官たちが銃撃するが、果たして死んだか。疑問符が出て映画は終わる。

2025年3月29日土曜日

影なき狙撃者 The Manchurian candidate 1962

ジョン・フランケンハイマー監督、米、126分、白黒映画。フランク・シナトラ、ローレンス・ハーヴェイ出演。朝鮮戦争の場面から始まる。戦闘があって、負傷者等はヘリコプターで運ばれる。アメリカの基地に着陸した飛行機からハーヴェイが降りてくる。大歓迎ぶりでカメラマンなども多い。勲章を貰ったので母親と義理の父親が来る。一緒に写真を撮られる。義父は政治家で選挙に利用する気でいる。ハーヴェイは両親とも嫌っている。

過去の場面になる。中国やソ連の軍人らに囲まれている。ハーヴェイは言われるがまま仲間の兵士を殺す。ハーヴェイは洗脳されているのである。ハーヴェイの同僚軍人にシナトラがいる。シナトラも悪い夢を見る。シナトラはハーヴェイが大した戦功もないのに勲章を貰ったと知っている。戦友を助けたとされているが、実際は殺しているのである。シナトラはハーヴェイがおかしいと知りなんとか助けようとする。ハーヴェイに相思の仲で結婚したいと思っている女がいた。その父親が義父と反対の、革新派議員なので母親は反対する。後に好き合う二人は結婚する。

しかしトランプのクイーンの札を見ると、洗脳された状態になるハーヴェイは自分の意識のないまま結婚したばかりの妻とその父親を射殺する。更に大統領選の候補者を決める大会に行ってライフルを構える。シナトラは気づき、止めに駆け上るが間に合わず射殺する。ただし大統領候補でなく義父の政治家だった。シナトラが部屋に入るとハーヴェイはライフルを自分に向けて撃つ。

2025年3月28日金曜日

ゲットアウト Get out 2017

ジョーダン・ピール監督、米、103分。白人女性を恋人に持った黒人が災難に会う映画。黒人青年は白人の彼女と共に田舎にある彼女の実家に車で行く。そこの両親は暖かく迎えてくれる。黒人の使用人がいる。

黒人は彼女の母親から催眠術をかけられ、悪夢のような体験をする。やがてその家のパーティに、知り合いの家族らが多くやって来る。中に一人だけ黒人の青年がいた。年上の白人女性の恋人である。その黒人にスマートフォンで写真を撮ると驚愕される。正常でなくなる。黒人は警察にいる友人(黒人)に連絡し、またその写真を送る。警官はその黒人青年が失踪した有名人と知る。

ことの真相は、黒人からその健康な身体をもらうために、恋人とされていたのである。恋人は過去にも黒人の彼氏を多く持っていて、身体を取っていたのである。黒人は気づくと椅子に縛り付けられ、その眼などを盲目の白人に移植される予定だった。黒人は連れに来た男を倒し、その他の家族を殺していく。車で逃げるが木に衝突し、あの彼女が殺しにくる。何とか相手を押さえる。その時パトカーが来る。女は救助を求めるが、出て来た警官は黒人の友人だった。黒人は友人とパトカーで去る。

2025年3月27日木曜日

アンダー・ザ・スキン 種の捕食 Under the skin 2013

ジョナサン・グレイザー監督、英米スイス、108分。スカーレット・ヨハンソン主演。宇宙からやってきた異星人が地球人をものにしていく。その方法は地球人の美人(ヨハンソン)になり、男たちに声をかけてその気にさせ、ものにする。

スコットランドの田舎でヨハンソンは車を運転し、男を物色する。ものにするとは具体的には、暗い中、ヨハンソンの身体に魅入られた男たちが、近づいていくと沼のような地下に沈んでしまう、という風である。もっともヨハンソンは人間の女の皮膚をかぶっているだけなので、男とは交わうわけにいかず、最後は暴行を働こうとした男によって皮膚を裂かれ、燃えてなくなる。