2025年7月4日金曜日

山之内正『ネットオーディオのすすめ』講談社ブルーバックス 2024

著者はオーディオ評論家で、以前にもネットオーディオの入門書を書いているらしい。それは読んでおらず、本書が初めての本である。

書名はネットオーディオとあるが、むしろ最近の流行を反映してストリーム配信、定額音楽配信(よくsubscriptionの略だろうがサブスクなる言葉を見かけるが、この言葉を見ると、事前にまとまった金額を振り込むと雑誌や新聞が送られてくる制度を思い出す世代なので使いたくない。subscriptionとは事前に金を支払い、一定のサービスを受ける仕組みを指すのだろう)についての記述が主である。

書名のネットオーディオとは狭義のネットワークオーディオでなく、インターネットを利用したオーディオ全体を言っているようだ。狭義のネットワークオーディオとはNAS(音楽サーバー、外付けHDD)にCD等から音楽を放り込み(リッピング)、またはインターネットから音楽をダウンロードし、やはりNASに入れる。これをタブレット等にあるアプリで操作し、好きな音楽を選んで再生する。なりよりも簡単に音楽が聞け、ジュークボックスに例えた話があったがその通りである。後、PCオーディオなる言葉もあった。パソコンに入っている音楽を聞くのだが、そのままアンプにつないでも音が汚いので、DAC等を通してつなぎ、それからアンプで再生する。

随分昔から、先進国で音楽鑑賞の媒体としてCDがいまだに主流なのは、日本くらいだと言われていた。それでは外国では何が主流なのか。定額音楽配信らしい。そこでこの本では、今日本で聞ける「高音質」の定額音楽配信のうち、Amazon music unlimited、Apple music、Qobuzの説明が書いてある。世界的に定額音楽配信を流行させたのはSpotifyで、最初に簡単に触れているが低音質だとして一蹴である。それでこの三者の音楽配信を書いたのち、ROONについて、あと立体音楽(昔の4チャンネルもどき)や映像配信についても触れている。

2025年6月28日土曜日

海底から来た女 昭和34年

蔵原惟繕繕監督、日活、76分、白黒映画。海辺近くの別荘に帰った川地民夫はヨットに少女が乗っているのを見つける。水着姿で魚をとっているらしい。最近、海で死んだ者がいた。川地が少女に誘われて海底に潜ると死体があった。また鱶が遊泳している。そこの場所は誰にも言うなと少女の口止めで、川地はみんなに知らせるが、場所は忘れたと言うだけだった。少女を見た村人の中には怪しい目つきで眺める者がいた。

海に面した崖の上にある別荘に少女は上ってくる。同じ部屋で夜を明かす。崖の上から海に飛び降りて戻る。川地が友人らと山に行っている間、少女は別荘に来て、川地の兄に遭遇する。兄は放蕩者で、少女を口説き、明くる日海にヨットで連れていく。嵐になり兄は遭難する。川地は数日後、少女に再会する。村人たちは少女は鱶の化身だと言う。過去の災難時にも同じ少女が現れたという。川地は少女とヨットの上で再会を約束する。川地が寝すぎた間に村人たちが待っていて、現れた少女を銛で突く。川地が来た時はすでに血を船縁に残し少女は消えていた。川地は都会に帰る。帰る前に気を起こし、海に潜ってかつて少女と泳いだ場所を進んでいく。

2025年6月27日金曜日

養老孟司『バカの壁』新潮新書 2021

かつてのベストセラー、当時も読んだはずだが、再読。何でも自分で理解できる筈はない。理解できないのは、そこにはバカの壁があるから。書名は自分の知識、理解の限界を指すらしい。誰にでもバカの壁はある。だから話せば分かると思うのは間違い。分かるにしても夫々の個人毎に癖、制約がある。

個性を伸ばせという教育は誤り。他人との共通理解の方が重要。他人を理解できるようにすべき。意識と無意識がある。一元論と二元論がある。一元論は原理主義につながる。自分だけ、自分たちだけ、正しいは良くない。最後の方では経済のあり方、農業と加工業などを論じる。自然から離れている現在を批判しているように思える。正直言って十分理解できたと思えない。

2025年6月26日木曜日

妻は告白する 昭和36年

増村保造監督、大映、91分、白黒映画、若尾文子主演。若尾は夫殺しの容疑で裁判にかけられる。登山中、自分を含め落ちた者の中で、下にぶら下がっていた夫へのザイルをナイフで切り、転落死させたという疑いである。過去、夫(小沢栄太郎)と若尾は不仲だった。若尾が離婚したいと言っても小沢は聞いてくれない。

学者である小沢のところに出入りする製薬会社の川口浩は若尾と好き合うようになる。夫には巨額の生命保険がかかっており、夫を殺害したのではないかと告訴されているのである。川口には婚約者がいたが、若尾への同情、ひいては愛情から、婚約者と疎遠になる。

無罪判決が下る。若尾は釈放され、保険金も降りる。若尾からの連絡で川口が若尾の新宅に行くと豪華なアパートであった。調度品も新品を揃えている。驚く川口に若尾は保険金で買ったと言い、お祝いをしようと迫る。川口は拒絶する。若尾は小沢を殺すつもりでザイルを切ったと告白する。驚愕する川口は若尾を残してそこを去る。後日、川口の会社に若尾がやってくる。アパート関係は全部処分した。だから自分と会ってくれ、一年で一回でもとすがる若尾を振り切って去らせる。若尾は洗面所で毒薬による自殺を遂げる。

ロスト・ワールド The lost world 1925

ハリー・O・ホイト監督、米、68分、無声映画。コナン・ドイルの同名の小説を元に作られた。ロンドンでチャレンジャー教授は恐竜がまだ生存していると演説し、嘲笑を浴びる。以前、南米の台地に行った男は恐竜が現れ、そこに取り残された。その娘は父を捜しに南米に行きたいと言っている。娘のスケッチには恐竜が描かれてあった。費用は新聞社の記者が同行し、独占記事にするという条件で、その社が出す。

南米に着く。台地に上り、恐竜群を発見する。恐竜同士の戦いがある。娘の父親は亡くなっているようだ。猿人がいて邪魔をする。台地から降りる際に隊員を落とそうとするので銃で撃つ。動けなくなったブロントサウルスをロンドンに連れて帰る。劇場で見せる予定だった。恐竜を船から降ろす際、箱が落ちて壊れ、逃げ出す。ブロントサウルスは街中で暴れだす。建物を壊す。塔橋に来て橋の真ん中で橋が崩れ、ブロントサウルスも川に落ちる。そこで終わり。

スティーヴンソン短篇集(『マーカム・壜の小鬼』)岩波文庫 2011

『その夜の宿』A lodging for the night 1877  詩人で犯罪者でもあったフランソワ・ヴィヨンの物語。1456年のクリスマス、ヴィヨンは仲間が殺人騒ぎを起こし逃げる。入れてもらった家での老人との対話。『水車屋のウィル』Will O’ the mill 1878  山中に住む少年ウィルは平野に都会に出たくてたまらない。叶わぬまま成人し、牧師の娘を見染める。結婚するはずだった。しかしウィルは後に心を変え、結婚は取り止めになる。傷心の娘は他の者と結婚し、まもなく死ぬ。ウィルは生まれた場所に留まり、老年になると尊敬されるようになる。高齢で死ぬ。

『天の摂理とギター』Providence and the guitar 1878 旅回りの芸人夫婦がある町にやって来る。許可を与える警察署長から嫌がらせを受ける。その後、イギリス人の学生に会い、宿に行く。『ねじれ首のジャネット』Thrawn Janet 1881 村の牧師が若い時に遭遇した怪奇譚。みんなにいじめられているジャネットを牧師は助け、牧師館で使う。後に牧師は黒い大男に出会う。ジャネットが首を吊って死んでいた。ジャネットは魔女になり焼死する。黒い男は悪魔だった。なぜ牧師が悪魔に魅入られたか不明。

『マーカイム』 Markheim  マーカイムは骨董店に来て、店の主人を殺す。物色しようとしていたらある訪問者が来る。その男との会話が中心で、訪問者はマーカイム自身の分身、良心だった。マーカイムは後から来た女中に警察を呼ぶよう言う。『壜の小鬼』 The bottle imp 1891 はバルザックの『あら皮』やジェイコブズの『猿の手』と同列の作品。何でも願いが叶う、それには不幸が条件としてついてくる壜がある。本小説では主人公には婚約者がいて助けてくれる。

『声たちの島』The isle of voices 1893は『壜の小鬼』と同様の南海物。結婚した若者は魔術師である義父の手引きで、ある島に行く。そこではお金を入手できる。後に若者が行った島の人々は自分に親切にしてくれる。別の若い女と婚約する。その女が島の者は若者を食おうとしていると教える。逃げようとしたら声だけ聞こえる場所に行く。ここが以前、義父とお金を取りに来た場所だと知る。そこから初めに結婚した相手の家に魔法で戻る。「千夜一夜物語」に出てきそうな作品。

2025年6月24日火曜日

機動捜査班 昭和36年

小杉勇監督、日活、67分、白黒映画。覆面パトカーで街を回っている捜査班。キャバレーで暴力団の男が外から銃で撃たれる。担ぎ込まれた病院から逃げ出す。警察は暴力団同士の戦いであろうと推察する。

刑務所から釈放された男(内田良平)は一緒に出た丹波哲郎と共に妹のいる家に帰る。元いた暴力団に行くと今は勢力が落ちているらしい。病院から逃げ出した男もここの団員である。丹波がここで働きたいと言う。丹波は相手方の暴力団のところに行っても同様に、入れてもらいたいと言う。

相手方の暴力団は麻薬を扱っている男を捕まえる。ある会社の人間で、そこの会社に乗り込み、麻薬売買に関与し金をせしめようとする。最初に捕まえた会社員を殺す。警察は死体の銃弾から、暴力団が撃たれた際の物と同じと知る。暴力団はチンピラに罪を着せようと殺し、自殺に見せかけようとした。暴力団同士の対決が決まった。丹波は暴力団、警察に通報し、両者を衝突させようとしていた。警察は待機し銃撃が始まった時点で介入し、双方現行犯で逮捕する。これで暴力団は共に壊滅し、漁夫の利を得ようとしていた丹波も、双方から通報されており、警察に捕まる。