2026年3月24日火曜日

背徳のメス 昭和36年

野村芳太郎監督、日活、88分、白黒映画。黒岩重吾原作の映画化。大阪阿倍野にあるガタのきた病院が舞台で、患者も高級とは言い難い連中である。産婦人科の科長である山村聰をオールドミスの婦長、久我美子は慕っている。若い医師の田村高広は腕は良く治療には熱心だが、昔妻に裏切られ女不信に陥り、看護婦などを片っ端からものにしている。薬剤部の高千穂ひづるも手にかけた。

やくざの情婦が担ぎ込まれ、田村の忠告を無視して執刀した山村だが、女は死んでしまう。そのやくざが乗り込んで来て、2百万円支払えと恐喝する。山村は警察に言うぞとはねつけようとする。田村が自分の言うことを聞いていれば女は死なずに済んだと、仲の悪い山村に言う。もしやくざが騒いで裁判沙汰になった時、証言してくれるかと山村が言っても田村は良い返事をしない。病院でパーティがあり、酔いつぶれて部屋で寝ていた田村はガスの栓が開き、発見が遅ければ死ぬところだった。誰が犯人か、田村は推理する。

かなり危ない患者が来て、山村は身体が悪いと言って田村に任せる。患者は後に死ぬ。今度は山村が田村に治療ミスを非難できるようになった。病院が改築することになり、その祝いの席で、久我が山村に酒を勧め、自分も飲む。二人とも倒れ死んでしまう。久我の遺書を田村は読む。そこには久我の山村への思慕が綴られている。山村は久我の気持ちを全く察せず、魅力のない女と非難しているばかりである。山村の嫌う田村を殺して山村の気を引こうとした。毒入りの酒を山村に飲ませて殺し、直後に自分も飲んで自殺したのだった。

事件記者『影なき男』 昭和34年

山崎徳次郎監督、日活、52分、白黒映画。男の死体を車で運び海の近く(月島)に捨てるところから始まる。記者の一人の結婚式、そこに事件の知らせが入るので、記者連中は席を外して現場に向かう。死体に贋ドルがあって、最近起きた贋ドル事件との関係が疑われた。新婚旅行に行った記者は車中で四本指の男に遭遇する。以前の贋ドル事件で四本指の男が使ったとの情報があって、記者は怪しむ。戸倉温泉に着き友人の旅館に泊まるが、四本指の男を追おうとする。

東京では贋ドル一味の一人が支払いに贋ドルを使い、それを知った相手の悪党に殺される事件が起きた。この現場から贋ドルが見つかり、その被害者関係で捜査が始まる。旧華族の夫人などもからんだ贋ドル一味だったが、外国に高飛びしようとしていたところに警察隊が来て捕まる。新婚旅行中の四本指の男は事故死したが無関係の者と分かった。

2026年3月22日日曜日

倉田百三『出家とその弟子』 大正5年以降

戯曲で、大正時代に岩波書店から発行された際にはベストセラーになったとか。親鸞とその弟子唯円が主な登場人物で、唯円の方が劇では重要人物である。親鸞の思想だけでなく、キリスト教などを元にして書かれており、親鸞や浄土真宗の教えの解説やなどではなく、史実とも離れ、作者が自由に自分の思想を述べた劇である。

第一幕では雪の夜、親鸞と弟子らが宿を求めてある家を訪れるが、気分が悪かった主人は追い返してしまう。親鸞は石を枕に雪の中で寝る。後で主人は後悔し、家に招き入れる。この家の幼い子供が後の唯円という設定である。次の幕では京都が舞台で、成人した唯円が親鸞の弟子となっている。親鸞の子供善鸞が勘当されているので、唯円は善鸞に会い、相談にのる。後に唯円は芸者の一人と恋仲になり、悩み、僧としての勤めもおろそかになっているので他の弟子らから非難されている。唯円は親鸞に相談する。最後の幕は親鸞の臨終時である。唯円は結婚して子供もいる。善鸞も駆けつけ、謝る。親鸞は許されていると言って死去する。

2026年3月21日土曜日

火刑台上のジャンヌ Jeanne au Bucher 1954

アルチュール・オネゲル作曲、ポール・クローデル台本、フランス語によるオラトリオ(宗教的な内容の声楽(合唱を含む)曲、オーケストラ伴奏つき、オペラのような演技はない)『火刑台上のジャンヌ・ダルク』を映像化したものである。『火刑台上のジャンヌ・ダルク』は小澤征爾指揮のCDを持っており、他にも幾つもの録音が出ている。ただ映像化されているとは知らなかった。しかもイングリッド・バーグマン出演でロッセリーニ監督である。

ただ正直なところ、70年以上前の映画でカラーとはいえ画質は悪いし、元々この音楽に親しんでいない人が映画的興味だけで鑑賞すると、大して感心しないのではないか。もっともこの映画、指揮者もオーケストラも声楽関係もクレジットにない。

『火刑台上のジャンヌ・ダルク』の原題は、Jeanne d'Arc au bûcherで、bûcherは薪小屋、火刑台という意味があるので『火刑台上のジャンヌ・ダルク』は直訳である。もっともこの映画の題名については仏伊合作で、イタリア語では、Giovanna d'Arco al rogoとそのまま訳されているが、フランス語ではJeanne au bûcherと、ダルク d'Arcがない。

ストリンドベリ『父』 Fadren 1887

3幕の戯曲。家庭内が舞台で夫婦間の不和が描かれる。大尉と呼ばれる夫は、妻との間に一人娘がいる。夫婦間は険悪な仲である。言い争いの中で娘の父親が自分かどうか分からないと言い、それが題名になっている。

他の登場人物、乳母や妻の兄である牧師からも正気でないと思われている。最後は拘束衣を着せられ、発作を起こし倒れる。確かに夫である大尉は被害妄想に見えるが、作者ストリンドベリ自身の気持ちの現れなのであろう。

2026年3月19日木曜日

左ききの狙撃者 東京湾 昭和37年

野村芳太郎監督、松竹、82分、白黒映画、字幕では主演ではないが、実際には西村晃、玉川伊佐夫が話の中心。東京高島屋の近くの裏通りで、車に乗った潜入捜査をしていた麻薬取締官が射殺された。ビルの屋上から撃ったにしても左利きでないと周囲から見られるはずである。

麻薬取引を調べていき、佐藤慶演じる売人を逮捕するが、黙秘続けるので一度釈放する。この捜査の担当刑事が西村と若手であった。若手と西村の妹は恋愛関係にある。西村は追っていくうち、戦友に遭遇する。戦場では左利きの射撃手で、西村は救われた事がある。佐藤は殺され、追及していくとやはり戦友に疑いがかかる。戦友は頭の弱い女と結婚する予定だった。逮捕すべきかの判断で、西村は上司にもう一日待ってほしいと言い、西に列車で逃げる戦友を追う。列車内で西村は相手が犯人の証拠を掴んだので、手錠をかける。二人は格闘になる。戦友が列車の外に落ちる。手錠がかかっている西村は懸命に引き上げようとする。しかし列車が鉄橋にさしかかり、二人とも落ち、二人の死体が橋にぶら下がった状態で終わる。

2026年3月13日金曜日

事件記者『見えない狙撃者』 昭和34年

山崎徳次郎監督、日活、51分、白黒映画。アベックの強盗がアパートの一室に侵入し、物を捜している。たまたま引き出しの中に拳銃があって男はそれを盗む。この空き巣狙いで女の方だけが捕まった。警視庁の記者クラブに男から電話がかかってくる。女を釈放しろ、さもないと警官を銃撃するという脅しであった。捜査一課に伝えると、そこにも電話があったらしい。いたずらだろうと思っていたら、派出所が銃撃され警官が負傷した。

その薬莢の指紋からアベック強盗の片割れの男を特定した。その後、外人が銃殺される事件が起きた。同じ銃弾である。そこからアベック強盗の片割れがこの殺しもしたかとなる。新聞で読んだアベックの片割れは驚き、記者クラブに電話をかけてくる。自分は殺しなどしていない、盗んだ拳銃で脅しただけだと。受けた記者は電話をかけてきた男と会おうと言いだす。相手は銃を持っているという危惧があったが、警察も護衛に行くという。約束の場で相手に会ったが、その時悪漢どもが数人やってきて、銃を構えている。これは拳銃を盗まれた方が、盗んだ男を消そうとしたのだった。その時、警察が現れ悪人どもを逮捕する。片割れは事情がよく分からなかったが、記者があいつらが殺人の犯人だと教える。